砕け落ちた建物の残骸の真ん中で、ゲホゲホと音を立てる。今日の天気予報は外れのようだ。今にも雨が降りそうな曇りの空を少し眺めて起き上がる。横腹の辺りがじめつき始めた。イーター、倒さなきゃ。吹き飛ばされた方向でイーターが吠える。
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「嘘‼」
「二度言わせるなよ。」
「でも…」
泣きそうな顔をしても、ひなた姉さんは俺が泣かないってことを知り切っていた。二週間出動禁止とか信じたくなかった。ひなた姉さんはバカを見ているとうな表情で薬を渡した。
「脇が裂けたぞ。二週は当然だ。」
大人しくいろよ。病室の扉を閉めながらひなた姉さんが言う。やっぱ姉さんの口調、少し変わったな。矢後さんのせいだろうと、ぼんやり思う。ひなた姉さんの部屋でよく会うと思ったら付き合っていたとは。心の中でまた感謝を送る。好きな人のタイプが実の姉当然の人だとか、ほんと勘弁してほしい。吹き出して笑ってしまうが、少し鬱になる。雨の宿った窓の向こうはもうすっかり暗くなっている。千真のそんな顔、知りたくなかった。胸が締め付けられるようだ。くだらない感情に捕らわれていると、ばたんと勢いよく扉が開かれる。びっくりして体に力を入れてしまった。あ、
「いってー!」
息を荒くして駆け込んだ千真はそのまま立ち尽くした。12針縫た横腹を抑えて俯いた俺は、顔だけ千真に向けられた。必死に涙を堪える。
「お、お前今日実家戻るって…」
「…」
速足でベッドの側に近づいた千真は真顔で俺を見下ろす。怒っ…てる訳ないか。気まずい空気が流れて、先に口を切る。
「別に大丈夫だよ、掠っただけだし。」
「…医者呼んでくる。」
「え、いや、」
千真は椅子に荷物を置いては病室を出てしまう。突然のことに伸ばした手が行き場をなくす。千真なりに心配してくれてるのかな。下した手を無意味に動かす。そりゃ友達が怪我したら誰でも心配するだろ。期待しないようにしよう。千真の好み、全然俺じゃねぇし。ベットに横たわって髪の毛を少しいじってみる。千真の顔を見たら一瞬に日常に戻った気分だ。入院とかしたことないから、なんか浮いてるような感じだったのに。お医者さんとかどうでもいいから横にいてくれたらいいのに。薬が回ったようで眠気に襲われる。病室の扉に目を移したが、足音はまだ聞こえなかった。千真が戻ってくるまで起きていなくちゃ…