暗夜
俺は泣かない。我慢出来る。貴方に面倒な奴だと思わられたくないから。貴方といつまでもー 「そろそろ都会とか出てみたら?」 そう言われた時、俺は正直数秒間話に追いつけなかった。何で? 俺何かやらかしたっけ。 「行かないって言っても行かせるつもりだけど。」 食器を持った手が震える気がした。もちろん嫌だよ。嫌に決まってる。でもそう言わなかったのは、愚かな俺の優柔不断さと、貴方の決断に満ちた口調のせい。その日から俺をここから出させる計画は着々と進んだ。 腹ん中がざわめいて口が固まる。手元の荷物も鞄の中の金貨も嬉しくない。 「…行ってくる。」 「いや、行ってくるじゃない。戻って来るなよ。」 じゃあ昨夜のキスの意味は何だったの。そう聞きたいことをぐっと飲み込む。嫌われたくない。鼻先がずきずきする。 適切な挨拶を思い出せず、そのまま貴方に背を向ける。そう、いつか帰って来られるかも知らない。前向きに考え..
鈴木翔
2020. 2. 2. 22:47